なぜ安全活動は達成感を得にくいのか? ― ある漫画が工場時代の違和感を解いてくれた

記事内に広告が含まれています。

『運命など存在しないので』という漫画を読んでいたとき、ふと製造業での日々が頭をよぎりました。

作中では、結婚生活は家族全体が「0を維持できるように協力し合う活動」と表現しています。一方で、趣味や仕事は「プラスを生む活動」があり、そこには達成感や成長の実感が伴う、という話でした。

読みながら、すぐに思ったのです。製造業の仕事も、まったく同じ構造で二つに分けられると。

仕事を「0維持」と「プラス生成」に分けてみる

製造業の現場を思い返すと、「0を維持する仕事」の多さに気づきます。

生産現場での汎用品の連続生産がそうです。毎日同じ品質のものを、同じように作り続ける。止まらないこと、乱れないことが求められます。安全・防災・環境管理も同じです。3ゼロ活動(ゼロ災害・ゼロトラブル・ゼロクレームを目指す取り組み)と呼ばれるような活動は、
すべてマイナスの事象が起きないように維持し続けることが目標です。設備保全も、物流も、既存顧客との継続取引も、突き詰めれば現状を崩さないための仕事です。

一方で「プラスを生み出す仕事」もあります。新製品・新技術の開発、新規顧客の開拓。これらはこれまで存在しなかったものを生み出す仕事です。

この二つは、性質がまるで異なります。

「0維持の仕事」がしんどい理由

工場で働いていた頃、安全活動には常に力が入れられていましたヒヤリハット(重大事故には至らなかったが、ヒヤリとした体験の報告)の提出を徹底する。3ゼロ活動を推進する。設備点検を欠かさない。どれも重要なことです。

ただ、正直に言うと、達成感を持ちにくい仕事でした。

一年間無災害でも「当たり前」。事故が起これば「なぜ防げなかったのか」と追及される。
一生懸命穴を掘ったのに、翌日の雨で埋められてしまうような感覚でした。

理由は単純です。目標が常に「現状維持=ゼロを維持する)」だからです。

損失を防ぐことは重要ですが、成長実感とは別の話です。
どれだけ頑張っても進歩していないような気になる。それが「0維持の仕事」の構造的なしんどさです。これは担当者の意識や努力の問題ではなく、仕事の性質から来ています。

「0維持」の中に「プラス」を自分で生成する

そんな中でも、改善活動には面白さを感じていました。

異常を早く検知できる仕組みを考えたり、点検業務の工数を減らしたり、データを見える化したりする活動です。安全活動の文脈でいえば、「事故を防ぐ」から「事故を防ぎやすくする仕組みを作る」へのシフトです。

これは「0維持の仕事」の中に「プラス生成要素」を自分で組み込む、ということです。

マイナスに動いたときに自動で検知する仕組みを入れる。そもそもの作業をなくしてしまう。活動を効率化して工数を削る。こういった改善を自発的に考えられるようになると、昨日より今日のほうが良くなったという実感が生まれます。誰かに言われてやるのではなく、自分から動けるようになると、仕事は面白くなり、成長の実感が湧いてくるのです。

中南米で見た「維持を称える文化」

以前、中南米に駐在していたとき、印象的な光景を見ました。

工場が一年間のゼロ災害を達成したとき、大々的にお祝いをしていたのです。従業員にノベルティを配り、みんなで成果を称え合う。

文化の違いかなとは思いましたが、それ以上に、こういうことをきちんとできるリーダーや職場の風土はいいな、と感じていました。

日本の工場では「無災害は当たり前」でおしまいになりがちです。でも、事故が起きなかったのは偶然ではありません。日々の点検、声かけ、ルール遵守の積み重ねがあってこその結果です。「何も起きなかった」のではなく、「一年間守り抜いた」という成果として評価する。0維持の活動を、プラスの達成として読み替えるその姿勢が、あの祝いの場には込められていたのだと思います。

形骸化しない目標をつくるには

工場時代、毎年の部署目標にも違和感がありました。

災害ゼロ。トラブルゼロ。クレームゼロ。昨年のコピペで出てくるような目標が並ぶ。必要な目標ではあっても、年初に掲げて一年後に振り返るだけだし、途中で1件も起きると目標未達となり目標が形骸化する。無意味であり不思議でした。

そもそも「マイナスにならないようにする」という目標は、マイナスになった瞬間に未達となります。また、達成の実感を得にくい構造でもあるため、組織のモチベーション維持の観点から十分でないように感じます。

そのため、「0維持」の目標は掲げつつも「プラスを生む目標」を意識的に組み込むといいと考えます。

安全活動であれば、「災害ゼロ」に加えて、「危険箇所の改善を○件実施する」「ヒヤリハット分析の工数を半減させる」「異常検知の仕組みを導入する」といった目標です。すべてを置き換える必要はありません。ただ、改善という要素が一つでも入ると、目標が前向きなものになり、達成も確認しやすくなります。

やっていて面白い部分のある仕事なら、しんどくても踏みとどまれることも多いはずです。

おわりに

一冊の漫画が、工場時代に長年感じていた違和感を整理してくれました。

0維持の仕事」と「プラスを生成する仕事」。この二つの性質の違いを意識するだけで、なぜ達成感が得にくいのか、なぜ目標が形骸化するのか、なぜ改善活動だけは面白かったのか、がすっきり説明できます。

製造業の現場には、守ることが求められる仕事がどうしても多い。それは組織に不可欠です。ただ、人が前向きに働くには、守るだけではしんどいです。

「0維持の仕事」の中に、「プラス生成の要素」をいかに組み込むか維持できたことをきちんと評価する文化を持てるか。そのあたりに、仕事を長く面白くするためのヒントがある気がしています。

本記事のきっかけとなった漫画はこちら👇

この記事を書いた人
Kyo-Sun

ブログ2年目のアラフォーサラリーマン "Kyo-Sun" です!
10年以上の製造会社経験(2か国の海外赴任含む)を経て、コンサルタントへ転身。実務で培ったPower BIによる仕事効率化や趣味のデスク環境改善を中心に発信中。
『効率的に 健康的に 働いて 楽しく 暮らす』をテーマに、実体験に基づいた実生活に役立つ情報をお届けします!

Kyo-Sunをフォローする
学習・思考法
シェアする

コメント

タイトルとURLをコピーしました