AI時代に不可欠となる、BIの「再現性」とデータ定義

記事内に広告が含まれています。

生成AIの目覚ましい進化によって、ビジネスサイドや一部のトレンドでは「AIが分析もグラフ化もやってくれるなら、わざわざ重たいBIツールを導入する必要はなくなるのでは?」という声を小耳に挟むようになりました。

確かに、単発の分析や「今すぐグラフが欲しい」という用途であれば、AIのスピード感は圧倒的です。しかし、実際の業務やデータ活用の現場に近い立場からすると、状況はむしろ「逆」だと感じます。

AIの登場によって「分析結果を作るコスト」は劇的に下がりました。
一方で、AIは「同じ方法で継続的に再現すること」はあまり得意ではありません。

これに対し、適切にモデリングされたBIは、同じ定義・同じ計算ロジックで、継続的に分析結果を提示できます。

つまり、AIが進歩するほど、「再現性」を担保する受け皿としてのBIの重要性は増しているのです。

ただし、AIとBIをどれだけ使いこなしたとしても、元となる「データ定義」が曖昧であれば、その分析結果は信頼を失い、すべては砂上の楼閣と化します。

AI進化でBIツールは不要となるか? むしろ共創が吉

AIの進化はまさに日進月歩であり、本当に便利です。

データを食わせ、分析の目的や結果のイメージを伝えれば、瞬時に分析結果やグラフを作ってくれる。これだけを見ると、「もうBIツールはいらないのでは?」と思うのも自然です。

しかし、AI単体でのデータ活用には不安も残ります。

例えば、

  • どのデータを使ったのか
  • どんな前処理をしたのか
  • どんな定義で集計したのか
  • 前回と同じ条件なのか

といったことは曖昧であり、継続運用するには心もとない。

つまりAIは、「素早く答えを出すこと」は得意でも、「継続運用できる形で構造化すること」はまだ弱いのです。

だからこそ重要なのがBIです。

AIで仮説出しや試作を高速に行い、BIで継続運用可能な形へ落とし込む。

この共創関係を作れると、意思決定のスピードと信頼性を両立しやすくなります。

Power BIなどBIの強みは「可視化」のみならず「再現性」

Power BIやPower Queryを使っていて感じるのは、BIの本質的な価値が「綺麗なグラフ」だけではないということです。

本当に重要なのは、

分析ロジックそのものを構造として残せる

点にあると思います。

例えばPower BIでは、

  • どのデータソースを使っているか
  • どんな変換を行ったか
  • テーブルをどのように結合したか
  • どんなDAXで計算したか

これらすべてが視覚的に残ります。

つまり、「あの分析、どうやったんだっけ?」が起こりにくい。

これは実務ではかなり重要です。

AIで生成した分析結果は、作成者しかわからない「ブラックボックス」になりやすい。

一方でBIは、モデリング画面やPower QueryにETLやテーブル同士のリレーション履歴が残るので、

モデルそのものがドキュメント

としての価値を持ちます。

これを見れば、毎回AIに確認することもなく、継続的かつ非属人的に運用できるのです。

単発でなんでも分析できるAI時代だからこそ、この「再現できる構造」の価値はむしろ上がっていると感じます。

AIとBIは「役割分担」で考える

AIとBIは競合関係ではなく、得意領域の異なる補完関係です。

一言でまとめるなら、

AIは「探索」に強く、BIは「継続」に強い

AIが強いのは「考える前段階」と「試行錯誤」

AIは、まだ答えが固まっていない段階で特に力を発揮します。

例えば、

  • 「どう分析すると面白いか」の仮説出し
  • 自然言語からDAXやSQLを書く補助
  • エラー原因の特定
  • グラフ結果に対する示唆出し
  • 非構造データの整理

などです。

つまりAIは、まず試してみるを圧倒的に高速化してくれます。

BIが強いのは「継続運用」と「組織共有」

一方でBIは、試行錯誤して見つけた分析を、「継続的に使える形へ固定化する」ことに強みがあります。

例えば、

  • 同じロジックで毎回再計算する
  • データ更新へ自動追従する
  • KPI定義を統一する
  • 組織内へ安全に共有する
  • 権限管理や監査性を担保する

などです。

最近ではPower BIの内部にもCopilotが標準搭載されるなど、ツール自体の融合も進んでいます。

これからは「AIかBIか」という二択ではなく、両者の得意領域を分担させ「AIもBIも」といった発想をすること重要になると思います。

「データ定義」が曖昧ならAIもBIも砂上の楼閣

AIとBIをうまく役割分担させられたとしても、元となるデータの意味が曖昧であったり、データ定義がバラバラであれば、分析結果は無意味であり、むしろ意思決定をゆがませる「」となってしまいます。

特に製造現場やグローバル企業などでは、以下のような定義のズレが多発します。

  • 売上の定義が部署ごとに違う
  • 個数とケース数が混在
  • 為替換算タイミングがバラバラ
  • 工場ごとに歩留まり定義が違う
  • SI単位系ではなくinch, lbs系
  • 締め日が拠点によりバラバラ

こういったズレの怖いところは、数字である以上集計ができ、分析結果が出てしまうこと。AIもBIもこういったデータ定義のズレは自動で判断してくれないのです。

だからこそ重要なのは、「このデータは何を意味するのか」を整理し明文化すること。

どの粒度なのか。誰が管理するのか。いつ更新されるのか。どう計算されるのか。

地味ですが、この「データ定義」の整備こそが、AI活用やBI活用の土台になると思います。

こうしたデータ定義の問題は、システムを刷新しても自動では解決しません。実際、多くの企業では今もなお、巨額の費用をかけた基幹システム刷新プロジェクトが進んでいます。

もちろん、老朽化したシステムの更新自体は重要です。しかし、システムを最新化しただけで、データ定義や粒度のズレが解決するわけではありません。

むしろ、

  • 「どのデータがどこにあるのか」
  • 「どういう定義で管理されているのか」
  • 「どの粒度で、どの頻度で更新されるのか」

を整理し、AIやBIから再利用しやすい形に整備することの方が、費用対効果の高いケースも多いように感じます。

AI時代では、データを完全統合することよりも「意味を揃えること」の重要性が、以前よりさらに高まっているのではないでしょうか。

AI時代に求められるのは「ビジネス理解」がある人材

AIによって、実装そのもののハードルはかなり下がりました。

DAXもSQLも、AIに聞けばかなり書ける時代です。

しかし逆に、「そもそも何を分析すべきか」の重要性は上がっています。

つまり今後価値が上がるのは、

  • 現場を理解している
  • ビジネス課題を理解している
  • データの意味を理解している
  • 何を分析すれば意思決定につながるかがわかっている

こういう人材ではないでしょうか。

従来のIT導入では、

業務部門IT部門実装

という長いプロセスをたどるにもかかわらず、できたものは何とも使いにくいが作り直しはいまさらできないという悲劇が起きがちでした。

しかし今は、

ビジネス理解 AIで高速試作 BIで継続運用

をかなり短いサイクルで、しかも小規模なチームでも高速に回せるようになっています。

特に現場感を持ちながら、AIとBIを組み合わせて改善を回せる人の価値は、今後さらに高まっていく気がしています。

まとめ:AI時代ほど「ビジネス理解」が重要になる

AIによって、分析や実装そのもののハードルは大きく下がりました。

しかしその一方で、

  • 何を分析すべきか
  • どのデータを信頼すべきか
  • どう定義を揃えるか
  • どう継続運用するか

といった「ビジネス側の設計力」の重要性は、むしろ上がっているように感じます。

AIは探索や試作を高速化してくれる。
BIは、それを再現性のある形で継続運用させてくれる。

そして、その土台になるのが「データ定義」です。

AI時代だからこそ、

データの意味を理解し、ビジネスに沿って構造化できる人

の価値は、これからさらに高まっていくのではないでしょうか。

この記事を書いた人
Kyo-Sun

ブログ2年目のアラフォーサラリーマン "Kyo-Sun" です!
10年以上の製造会社経験(2か国の海外赴任含む)を経て、コンサルタントへ転身。実務で培ったPower BIによる仕事効率化や趣味のデスク環境改善を中心に発信中。
『効率的に 健康的に 働いて 楽しく 暮らす』をテーマに、実体験に基づいた実生活に役立つ情報をお届けします!

Kyo-Sunをフォローする
学習・思考法
シェアする

コメント

タイトルとURLをコピーしました